T君のこと

T君のこと

T君の事
何年か前の事だった。偶然、久しぶりに 会社の食堂で顔を見かけ、話す。かれとは、三十台後半の頃、同じプロジェクトの一員だった思う。その彼が、先だって、某エッセイに公募して、賞を戴いたです。是非お送りするから、読んで下さいと言い、翌日、会社のメールに彼からのメール届いた。授賞式の様子を撮った写真と選者と恥ずかしそうに並ぶ彼の顔がそこには、あった。四百字ずめの原稿用紙に食べ物の思い出を綴っていたと思う。そして、凄いなあと感心したりした。彼は、有名な国立の理系の出身者だから、尚更、意外感を持った。
その彼と偶々、会う機会が取れそうです。なかなか会えない同年のSさんに、お会いしませんかとお誘いすると、来週は予定があるので、翌々週ならという事で、調整が済んだのが、先週の月曜日でした。この調整役が、同じ事業所のT君でした。Sさんとうまく連絡が取れず、T君に電話で連絡すると、Sさんは、そろそろ定年で、たまりに溜まった休暇を消化するのに、お休みが多いので、私が、話してみますと、以前と変わらぬ声が、返って来た。
そして、また、書いたので、読んでみてくれませんかと彼が遠慮がちに言う。私なんか読んでもと思いながらも、私で良かったら、お送り下さいと電話を置いた。その日のうちに、T君からは、メールに添付された原稿が送られて来た。
原稿用紙に50枚位のもので、以前読ませていただいたのが、エッセイだから、びっくりしながら読んだ。彼の文章は、誰にでもすっと読めて行く易しい文章から構成されている。そのせいか、
どんどん読んで行ってしまうような文章でした。それは、もうエッセイではなく、小説でした。私なんかが、何か言えるようなものではなかったが、感想を述べた。題材と彼の読者へのメッセージは、こんなことで、伝わりました。そして、過去の同様のテーマで書かれた小説では、時代の先取りがあったが、ここで、そんなものがあったらもっと良かったのではと、生意気にも感想を述べたメールした。
すると、また、読んでもらえますかと,今度は、驚いたことに百枚程の原稿用紙の文章が送られてきた。 相変わらず、遠慮がちに、読むのに無理だったら、結構だから、無理しないで下さいと添えられていた。これも面白く読み、また、拙い感想を送った。映画だったら、このシーンは、どう描くのだろうと書いた。
すると、またもや、読んでもらえますかと、百五十枚程の原稿用紙がメールで送られてきた。凄いなあ、こんなに書き溜めているんだとびっくりした。考えてみると、直木賞や芥川賞をとった作家が、賞後に、やつぎばやに、作品をだせるのは、こうして、書き溜められたと思えてきた。この作品は、前の二作品とはかわり、父と自分について書かれていた。これも、素晴らしいメッセージであった。また、ぼくは、無謀にも、生意気にも、感想を送った。
すると、実は、23歳から37歳迄、かかって書いたものがあります。文庫本一冊程の文章です。また、彼は、遠慮がちに、メールに文章をつづり、二百五十枚程の原稿用紙を送ってくれた。これは、更に、大きくテーマが変わり、受験生の心の葛藤、挫折、恋、そして、十数年後の姿を書いていた。これにも、感想文を図々しく書いて送った。ホッとしたと、ハッピエンドでホッとしたと。
この一週間で、彼の20年以上の葛藤の力作を読んだのかも知れないと思い、こんな浅はかな読みと感想で、申し訳ないと、メールで詫びた。
いつの日か、彼は、遅い文壇デビューがあるかもしれないと思った。

IMG_9947.jpg


      遅いラベンダーの芽生え 一緒に蒔いたビオラは本葉ですが、こちらは、遅い芽ばえ


それにしても、彼は、何故、綴ろうとし始めたのかと、急に気になり出した。会社人生の他に、自分の場所を見出す人は多い。でも、その時に、ここまで、何かに、一生懸命になるのは、まれかもしれないと思った。
最近、私、ずっと重くて仕方がなかったものが取れてきたと思えてきた。ちょうど、頭に孫悟空うの輪っかが、いつもある状態であったものから、輪っかが取れた感じです。
ここ数年来、体調を崩すことが多く、数日ながら、入院もした。
そして、温泉療法と思い、温泉に浸かりながら、ぼっとしていると、世間が見えてきたように思う。たとえば、非健常者の身体の大きな青年の世話をして、お風呂に入れる老いた親が、意外にも沢山いること。考えてみると、以前同じような状況を見たことがあること。でも、その時は、何も意識しなかったが、自分が弱っていると、沢山のことがみえてくるのだとその時、思った。
そんな風に自分をみると、T君もそうだったのかなあとふと思う秋の長い夜です。
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